「タクアン」ルポの最高峰?『河童のタクアンかじり歩き』妹尾河童
著者/訳者:妹尾 河童
出版社:文藝春秋( 1992-12 )
定価:¥ 650
文庫 ( 350 ページ )
ISBN-10 : 4167535025
ISBN-13 : 9784167535025
タクアンを通して見えてくるニッポン?大根好きにはたまらない、タクアンイラスト満載の一冊。
神津カンナの「解説」がすべて
河童さんは、タクアンの研究家であるだけでなく、譲渡カギ、弁当箱、ホテルの部屋、トイレ、ミジンコなど、実にまあ、いろいろなものの研究家である。そして河童さんのすごいところは、ただ単にそういう品々を研究すらだけではなく、それらを切り口にして、文化論や民族論、人間論を展開させるところにある。(原文ママ)
かなり長く引用しましたが、つまりそういうことです。
タクアンから展開するテーマ
- ○ 土呂久のヒ素公害?「魚が住まぬ澄みきった水」
- ○ 腎臓のメカニズムと重要性?「腎臓の賢さに脱帽!」
- ○ マタギ?「マタギの里は豪雪地帯」
- ○ メディアの在り方?「雪の山陰に“故郷”をみた」
- ○ 刑務所ルポ?「刑務所の二十五グラム」
ざっと抜き出してみましたが、「公害」に「腎臓」、「マタギ」から「刑務所」まで。
「解説」にあるとおりまさに“タクアンを切り口に”文化論や民族論、人間論が展開されます。
腎臓はすげぇなぁ
なかでも特に興味深く、同時に感心させられたのは「腎臓の賢さに脱帽!」です。
前田医院の前田昭二院長に腎臓の働きをレクチャーしてもらう、という形式で進むのですが、この説明が非常にわかりやすい。
「腎臓の働きとはどういうものか」「人工透析とは何か」が小学生にもわかるように説明されています。
『河童が覗いたヨーロッパ』でおなじみの作者のイラストもすごくわかりやすい。
『河童が覗いた解体新書』とか出してくれないかな。
『河童が覗いた脳科学』なんてたまらなくおもしろそう。
“人間の臓器とはなんて良く出来てるんだろう”、と感心する一遍です。
“サクランボ・ユートピア”とはなんぞや
もう一つ、「雪の山陰に“故郷”をみた」で書かれているサクランボ・ユートピアも興味深かった。
サクランボ・ユートピアとは、東京キッドブラザースの主宰者東由多加が、故郷を持たない者たちのユートピアを作るために立ち上げたプロジェクトである。土地を購入するために3600人が千円の会費を払い[1]、 1972年に約30名の都会の若者たちがユートピア(理想的な故郷)を求めて佐治村に移住して来た。しかし若者達は夢と現実のギャップを思い知り、村民との交流もままならないまま都会に戻り、プロジェクトは頓挫した(Wikipedia)
ヒッピー全開のエピソードですが、これも入りは“タクアン”です。
「佐治村のタクアン」を取材する内に“ここがあのサクランボ・ユートピアの地だったのか”と気づいた作者。
そこからは村人への聞き込みにとどまらず、主催者であり東京キッドブラザース設立者の東由多加へのインタビューまで行います。
まるで佐治村(東京キッドブラザース?)を舞台にしたドキュメンタリーのようで読んでいて引き込まれました。
東由多加さんはあの「力石徹の告別式」をしたり「寺山修司らと天井桟敷を結成」した人だったんですねぇ。
東京キッドブラザースには柴田恭兵も在籍していたとか。
良質のルポルタージュ
タクアンへの知識はもちろん、タクアンを通して見えてくる景色があります(なんやそれ)。
マタギのイラストが味わい深くて素敵な一冊、ぜひ一読を!




