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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
カテゴリー: 海外小説 — written by tsujio 09.05.29.(金) 07:50

シャイロックがかわいそうな『ベニスの商人』

ヴェニスの商人 (新潮文庫)

著者/訳者:シェイクスピア

出版社:新潮社( 1967-10 )

定価:¥ 380

Amazon価格:¥ 380

文庫 ( 176 ページ )

ISBN-10 : 4102020047

ISBN-13 : 9784102020043


 言わずとしれたシェイクスピアの戯曲です。「知っているけど読んだことはない」という人もいるんじゃないでしょうか。僕もはじめて読んだのですが、「いくらなんでも」なオチには失笑しました。

「ヘリクツ」で観客は納得できたのか?

 借金をめぐる裁判所でのシーンが一番のクライマックスです。ご存じの方も多いのではないでしょうか。「肉1ポンドが借金のカタ」というやつ。支払期日にまにあわず悪者ユダヤ人シャイロックにナイフで迫られる主人公。そこで変装した友人の婦人が現れます。
 そこでの有名な台詞「肉1ポンドは切り取ってもいいが、血は一滴も出してはダメ。だって証文には“肉だけ”としか書いてないもん」。
 あわれシャイロックは貸し倒れに陥っただけでなく「むやみにイタリア人の生命をおびやかした」と財産も没収されてしまいます。

 そんな無茶苦茶なヘリクツ、もはや「言いがかり」「因縁」を通り越し「恐喝」です。悪者シャイロックがどんな反撃に出るか!とページを繰ると、なんとシャイロック“いたしかたなし”とまさかの退散です。
 まんまと財産をせしめた主人公は仲間を集めて連夜のどんちゃん騒ぎ・・・というところまでいって欲しかったですどうせなら。学者に化けた女が得意げなのもイラつきます。

シャイロックの側からみると

 ことあるごとに主人公に商売の邪魔をされ、あまつさえ「犬」呼ばわりされていたシャイロック。どんな理由があるにせよそんなシャイロックに金を借りた主人公の厚顔無恥さが際だちます。
 「親友を大事にするが故に」借りたというもっともらしい理由がありますがそれは主人公のエゴでしょう。この親友に借金が払えない現状を手紙に書き、最後に“気にしないでくれ。この世の春を楽しまれんことを”なんて言いながら次のシーンでは“きっと助けに来てくれるはず”って精神的に不安定か主人公。
 しかも金を用立てた親友にそんなこと伝えるかふつう。「おまえのせいで死にそうになってんねん。でも気にせんといて」って気にするわ。「親友を大事にする」なら何も言わんと肉一ポンド切り取られてくれよ主人公。

 自分のエゴを満たすために普段人間扱いしていないシャイロックからあつかましく勝手に借金した挙げ句、自分がピンチになると「別にいいんやけど、おまえのせいで死にそうやで?」と親友に罪悪感を押しつける主人公。

 どっちが良いもんか悪もんかわかりません。

 すべての財産を積み、嵐で遭難した主人公の船がラストでなぜか無事戻ってきます。何の説明もなしに。「夢オチ」並みの理不尽さです。

ベニスの商人を通して見るユダヤ人

 「ユダヤ系アメリカ人」(本間 長世)の中で「舞台の上では、シャイロックが悪者としてのユダヤ人を象徴し続け」「人びとから金をしぼり上げるユダヤ人という悪いイメージ」を作ったひとつの作品である「ベニスの商人」でユダヤ人がどう描かれているのかも興味がありました。

 この作品で感じる理不尽さは、迫害されていた(る)ユダヤ人に対する理不尽さとおなじものでした。だからこういう作品が作られ、ウケたんでしょうね。「加害者の視点」で作られていると思います。

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カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.05.09.(土) 01:43

『夜のピクニック』には出かけない

夜のピクニック (新潮文庫)

著者/訳者:恩田 陸

出版社:新潮社( 2006-09 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 455 ページ )

ISBN-10 : 4101234175

ISBN-13 : 9784101234175


 第二回「本屋大賞」受賞作で映画化もされています。

 大人の男性が読んでも「おもしろい」とは思わないんじゃないかな。「なんでやねん」な箇所が余りにも多い。そう感じる理由は以下です。

登場人物の数々の問題行動

 おかしな行動をする登場人物がいっぱいです。僕の一番の「なんでやねんっ」は、「思春期」の「男子高校生」が「自分に気のある」「美人の女子高生」に、「何もしない」エピソードです。そんなことあ・り・え・な・い。

 理性とリビドーの板挟みで圧死しそうな高校時代を過ごした僕はこれが一番シラケました。もちろん小説は作り話ですが、もう少しリアリティを持たせて欲しかったです。「美人の女子高生に好意を寄せられてる」なんて男子高生にすれば最高の高校生活じゃないか。わりかし人生のターニングポイントになり得る重大事件ですよ。なぜ付き合わないのかその理由もあやふやです。「実はゲイでしたーチャンチャン」という手垢の付いたオチでもいいから欲しかったです。作者の中で自己完結している感じ。

 こういうどうも合点がいかないエピソード、いっぱいです。

あくまで女性の視点と感性(?)

 全体が「あくまで女の子(女性ではなく)」なふわふわした空気にくるまれており、メインであるはずのテーマを読んでも「??」です。まったく主人公に感情移入できません。女子高生に感情移入できる31歳(男)は世の中の空気読めてない気がしますが。「歩行際」という実際にある行事がテーマなのに登場人物に現実感がまったくなく、「これは作り話です」と本が言っているようです。きっと想定読者は小学生?高校生の女の子なのでしょう。

 「1000人一緒に24時間夜を徹して、80キロを歩く伝統行事、歩行際」という舞台設定はおもしろそうだっただけに残念でした。

  ただ、『夜のピクニック』のAmazonレビューは高評価なんですよねー。
 ホントに小説なんて読み手によってまるっきり受け取り方が違います。

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