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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
Category: 小説 — written by tsujio 09.08.31.(月) 07:49

『中吊り小説』

中吊り小説 (新潮文庫)

著者/訳者:吉本 ばなな 阿刀田 高 椎名 誠 村松 友視 高橋 源一郎

出版社:新潮社( 1994-12 )

定価:¥ 460

文庫 ( 271 ページ )

ISBN-10 : 4101359113

ISBN-13 : 9784101359113



 JR東日本『Tokyo Train キャンペーン』で中吊りに連載された8編の小説に11編の小説・エッセイを加えて一冊にまとめた本。

バブリーな企画

 すごく金かかってるだろうなと思いました。
 どのくらいの路線で掲載していたかは知りませんが、中吊り広告掲載料と作家に払う原稿料を含めるとかなりの金額になっていたと思われます。

 末ページに「一九九〇年九月から一九九一年九月まで」とあるので、まさにバブルがはじける少し前です。

 読んだことのない作家がたくさん収録されていました。
 なかでも村松友視が個人的にすごくよかったです。
 すごくくだらなくて。
 「この作家を読んでみようリスト」に追加しました。

 椎名誠の『ある日。』もよかったです。
 軽く読めてオチも好きです。

 逆に「こんなの通勤電車で読みたくないな」という男女関係を扱ったものも多いように思いました。
 あさっぱらから“父の愛人が?”なんて読みたくないです。
 
 電車内での気分転換にどうぞ。
 

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.28.(金) 07:54

『照柿』は骨太だった

照柿(上) (講談社文庫)

著者/訳者:高村 薫

出版社:講談社( 2006-08-12 )

定価:¥ 680

Amazon価格:¥ 680

文庫 ( 392 ページ )

ISBN-10 : 406275245X

ISBN-13 : 9784062752459



照柿(下) (講談社文庫)

著者/訳者:高村 薫

出版社:講談社( 2006-08-12 )

定価:¥ 650

Amazon価格:¥ 650

文庫 ( 336 ページ )

ISBN-10 : 406275259X

ISBN-13 : 9784062752596


 『マークスの山』に続く合田刑事第2弾。

高村薫の取材力はすごいんじゃないか

「ドストエフスキーの『罪と罰』のような作品をお願いできませんでしょうか」と作家に注文して書いてもらったのが『照柿』だった

 はじめて読んだ高村薫の作品『黄金を抱いてとべ』は「なんかようわからんなぁ」と思っただけでした。

 この作品もあまり期待せず読み始めましたが、下巻に入る頃から俄然おもしろくなってグイグイ引き込まれました。
工場の描写がきもちいい

 主人公の一人は工場で働いています。金属の「熱処理」工程を担当しているのですが、作業内容の描写が細かい。
 ぜんぜん興味も知識もありませんでしたが、日中でも薄暗く暑い工場内や機械が造る影や油臭さや炎の熱を感じさせる描写はすごいなと思いました。
 取材がスゴイ。

これはもう一人の主人公が属する警察も同じで、よく知らないしここで描かれているうちのどれくらいが真実かはわかりませんが説得力はすごくあります。

ドストエフスキー『罪と罰』と似ているところ

 上巻を読んだ時点では「どこが『罪と罰』なんや」と思いました。類似点は「デキる刑事」が「和製ポルフィーリー」(ポルフィーリーは『罪と罰』に出てくる検事)と呼ばれているだけで、それもなんだか強引な感じでした。

 でも下巻の後半は確かに『罪と罰』してる感じで、『罪と罰』より盛り上がりを感じました。

高村薫の固い文章について

 「?なのだった」と突然挟まれる大仰な語尾と「え?電話で話してるのは“妹”と“妹の亭主”のどっち?」というようなわかりにくい箇所もあります。
 最初はいちいちひっかかって「読みにくいなぁ」と思いましたが、下巻に入る頃には気にならなくなりました。
 固い、男らしい骨太さを感じる文章でした。ゴリゴリしてます。

高村薫のハードカバーと文庫版

 これも『あとがき』にありますが高村薫は文庫版を出す際はおもいっきり手を入れるそうです。作品によってはハードカバー版とまったく別の文庫版が出来上がるそうで。
 下巻の最後のページにも

本書は一九七七年七月に小社より刊行された作品を、大幅改稿し分冊した下巻です

 という断り書きがあるほど。

 『黄金を抱いてとべ』でもう高村薫は読まないだろうなと思っていましたが、この作品を読んでもう一冊読みたくなりました。

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.27.(木) 07:54

『ぼっけぇ、ぎょうてえ』はそねーなにぎょうてくない

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者/訳者:岩井 志麻子

出版社:角川書店( 2002-07 )

定価:¥ 500

Amazon価格:¥ 500

文庫 ( 211 ページ )

ISBN-10 : 4043596014

ISBN-13 : 9784043596010



第六回日本ホラー小説大賞受賞。第13回山本周五郎賞受賞。 

ぎょうてえのは岩井志麻子本人か

 岩井志麻子をはじめて見たのは探偵ファイルの記事でした(検索するが見つからず)。掲載されていた下品さ炸裂の記事と、“酒と男を語る深夜三時の場末のスナックママ”、という写真は強く印象に残り、本屋で見かけ購入してしまいました。

 「ぼっけぇ、ぎょうてえ」は岡山弁で「とてもこわい」という意味だそうです。
 裏表紙だけ読み、むかし1人暮らしの部屋で深夜に『リング』を興味本位で観てしまったときの恐怖と後悔を思い出して少したじろぎました。
 

なんだか、いや

 読んでみると、「ホラー小説」というより「怪奇小説」というほうがぴったりくる感じです。
 舞台も明治時代だったり、貧しい山村だったり全体的にトーンがくらーいです。
 「なーんか嫌な雰囲気やな」という、「恐い」というより「不快」さを読んでいて強く受けました。

 これまた小学生のとき、紙芝居のおじいさんがダミ声で語る「お岩さん」を思い出しました。
 そう、「お岩さん」な感じです、収録されている三編は。

 登場人物もじめっとしてます。

 “斧で手足切断されて血がどばーっチェーンソーで胴体切られて血がどばーっ、でも主人公が立ち去ったあとにピクピク動いて復活します、基本的に死なないんだけど十字架だけはご勘弁、指で形をつくられただけで悲鳴を上げます、だってわたしもクリスチャン”

 という海外ホラーの単純明快さ(知りませんが)はなく、ただひたすら“いやー”な感じだけが残ります。

 なにより貧乏がいちばん恐いなぁ、と本作を読んで思ったのでした。

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.26.(水) 07:53

『リレキショ』で投げ出すことを考える

リレキショ (河出文庫)

著者/訳者:中村 航

出版社:河出書房新社( 2005-10-05 )

定価:¥ 515

Amazon価格:¥ 515

文庫 ( 208 ページ )

ISBN-10 : 4309407595

ISBN-13 : 9784309407593


第39回 (2002年) 文藝賞受賞作品

きっつー・・・

 この本を読むまで、読み始めた本は最後まで読むことにしていました。

 最後まで通して読まないとおもしろいかどうかなんてわからないと思っていたからです。

 この本を読んで「途中で読むのをやめる方がいいこともある」とはじめて思いました。

 “最後まで読まないと”なんて自己満足な義務感で読むのはバカらしいことを気づかせてくれる一冊でした。

 その本が良いか悪いかなんて読む人の主観が大きいと思いますし、この本はぼくにとってはまったくダメでした。

 「こども大人」の頭の中を覗いているような

 “からだはこども、でも頭脳はおとな”(こんなんやっけ?)のコナン君とは真逆、“からだはおとな、でも頭脳はイタタタ小学生”でしょうか。

 裏表紙に「都会の青春ファンタジー」とありますのでこれで良いんでしょう。「青春ファンタジー」ってなんやねん、定義を教えてくれやっ。

 「ファンタジー」というか「妄想」がぴったりくるんじゃないでしょうか。“都会の青春妄想”となると一気にサスペンス、病んだ現代社会ってかんじですね。

中村 航について想像をめぐらしてみる

 小学校の昼休み、外に遊びに行かず机に覆い被さって「ものがたり」をノートに書き続けるちょっと内気な生徒の机から、掃除の時間にホウキでチャンバラしていたやんちゃな男子がよろけて机にぶつかった際に「バサッ」と落ちたノート一冊。

 「なんやこれ?」と詮索好きなおばちゃんのごとく何のためらいもなくノートを広げると女の子のような細かい字がビッシリ。

 「なんやなんや」と三人でのぞき込んで読んでいくと主人公がお姫様の物語、でもまてよ、これってアイツ自分のことちゃうの?え?でもアイツ男やん、ホラここに書いてあるようなメガネアイツしてたやん、でもなんでお姫様がメガネしてんねん、あ、ちょっとまってこれおまえのことちゃうの?え、どれどれ見せて見せて、あ!ホンマや!「鼻と眉毛の下に大きなホクロがある」って書いてある、え?おれどうなんの?先めくれや先、あ!死んでる!なんでトラックに轢かれてんねん!イラストまで書いたぁるやんけ、ごっつ血ぃ出てるでおまえ確実に死んでるわ、でもなんでお姫様がトラック運転してんねん、あ、こないだおまえアイツのこと「女みたい」ってからかってたからちゃうん?アイツ泣きかけてたもん、マジで?!・・・まぁええわ、でもまぁアイツちょっとヤバない?

 三人は顔を見合わせそっとノートを机に戻す夕暮れの教室、外ではスズムシが鳴いており、ああ、もうすっかり秋ですね、という作者の子供時代に思いを馳せてしまうほどです。

世間の人とのずれ

 『ゴールデンスランバー』を読んだときにも思いました。「みんなおもんないって思ってるやろ」と。でも検索してみると肯定的な意見が殆ど、否定的な意見は2chにチラホラあるだけ。この本も同じでした。

 やっぱり世間の人、というか10代20代の人とはおもしろいと思う感覚がズレてきてるんかなー。

 ソッと背中を丸める初秋の朝なのでした。

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Category: オススメ本,小説 — written by tsujio 09.08.25.(火) 07:00

『破戒』する

破戒 (新潮文庫)

著者/訳者:島崎 藤村

出版社:新潮社( 2005-07 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

ペーパーバック ( 500 ページ )

ISBN-10 : 4101055076

ISBN-13 : 9784101055077



島崎藤村が穢多・非人ををテーマに描いた作品。主人公は被差別部落出身の小学校教師。

穢多・非人は社会の授業で習っただけですが

 『たかじんのそこまで言って委員会』で猿回しの村崎太郎さんが自身は被差別部落の出身であることを話しておられました。
 また、野中広務も部落出身をカミングアウトしていると知りました。

 でも、部落差別に関心を持ったきっかけで大きかったのは白戸三平の『カムイ伝』を読んだからです。マンガですけどあまりに酷い生活してたので。
 主人公が“自身が部落出身者”でありそれを“カムアウトするかどうかで”苦悩する様は、『罪と罰』の主人公が自分の犯した殺人で苦しむ様とよく似ていました。
 
 “バレそでバレないうっふん”な状態に苦しみ続け、最終的に「破戒」する場面はドラマティックでした。

後書きがおもいっきり批判なんですけど

ぼくが読んだのは新潮文庫ではなく岩波文庫版です。

 「あーおもしろかった」と満足して『あとがき』を読むとこれが思いっきりこの小説の問題点の指摘です。
 解説者は野間宏

それゆえにこの小説は、部落の問題を本質的にはなんら解決しないところに結末を見いださなければならなかったのである。

あらら

この小説が差別される部落民の問題をとりあげ日本で最初の近代小説を確立しようとしながら、逆に多くの部落の人たちを傷つけ、苦しめてきた原因がある。

えー

“『破戒』も厳しい批判を受ける必要がある”

そんなに?!

 『少年H』を読んだときにも思いましたが、やはり「戦争」や「差別」を取り扱った小説は何らかの形で批判されるんでしょうか。

 でも『あとがき』でこんなこと書かなくてもいいのに。

 なんだかむずかしいですね。
 

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