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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
Category: 海外小説 — written by tsujio 09.12.10.(木) 07:42

『高く孤独な道を行け』のストーリーはどうか

高く孤独な道を行け (創元推理文庫)

著者/訳者:ドン ウィンズロウ

出版社:東京創元社( 1999-06 )

定価:¥ 1,050

Amazon価格:¥ 1,050

文庫 ( 453 ページ )

ISBN-10 : 4488288030

ISBN-13 : 9784488288037



 「探偵ニール」シリーズ3作目。前作『仏陀の鏡への道』はイマイチ消化不良でしたが、本作はどうでしょうか?!

戻ってきたニール・ケアリー

 「もっとニールの活躍を読みたい」と前作を読み終わったあと物足りなさを感じましたが、本作はその点大丈夫。
 前作にあった「文化大革命」のような小難しい背景も無いですし。
 舞台はイギリス→中国ときて本作ではアメリカです。

1作目『ストリート・キッズ』の延長

 前作では物語に没入しようとするところで歴史背景が延々続いたりしましたが、本作ではあくまで主人公ニール・ケアリーの行動がメインです。
 一作目を面白いと感じた方ならすんなり入れると思います。

 そういう意味では2作目がちょっと異質だったのかなと。
 また、前作のエンド部分から物語が始まりますが、最初だけなので、2作目をとばして本作を読んでも大丈夫だと思います。

成長する主人公

 1作目『ストリートキッズ』から2作目『仏陀の鏡への道』ときて、3作目の本作。
 時間の経過が物語にも反映されています。

 一番に感じるのは「主人公ニール・ケアリーが大人になってきている」ということでしょうか。
 このシリーズは「ニール・ケアリーの魅力が中心」だということを考えると、これは意外に大きな変化です。

 まだ子供だった1作目から、青年へと成長する主人公を実感できます。

ニール・ケアリーが戻ってきたという安心感

 こればかりになりますが、「ニールの続きを読める」という喜びが大きいです。
 正直名作『ストリートキッズ』ほど物語に引きずり込まれることはありませんが、その後のニールを読める喜びが大きいです。
 
 決して本作がふつうの作品だと云うわけでなく、1作目が“面白すぎた”んです。
 
 でもやっぱりニール・ケアリーのキャラクターは魅力的だなぁ。

新しい展開も

 主人公の成長に伴って、登場する人物の設定も変わってきています。
 それに合わせてシリーズ全体の、主人公の人生が大きく影響されそうです。

 そういう意味ではシリーズ折り返し的な作品ではないでしょうか。

もどかしいところ

 いろいろな書評にもありましたし、このエントリーでも再三記述しましたが、やはり改めて1作目が与えた衝撃の大きさがわかります。

 『ストリートキッズ』を越える作品はむずかしいとは思いますが、本作でも“もうちょっと後半にかけて盛り上がって欲しかった”と思いました。
 
 

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Category: オススメ本,小説 — written by tsujio 09.12.08.(火) 07:47

濃いー8作品を収録。『美食倶楽部』

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)

著者/訳者:谷崎 潤一郎

出版社:筑摩書房( 1989-07 )

定価:¥ 1,050

Amazon価格:¥ 1,050

文庫 ( 447 ページ )

ISBN-10 : 4480023291

ISBN-13 : 9784480023292



 開高健『最後の晩餐』に転載されていた『美食倶楽部』の一部を読み、“ぜったいこれは読もう”と決めていました。
 本書には『美食倶楽部』を含む大正期の谷崎作品が8編収められています。
 すべて「濃い作品」ですが、中でも特に印象に残ったものを。

美食倶楽部

 タイトル通りの内容ですが、食べている描写が“汁にまみれている”様を想像させます。
 “じゅくじゅく”いう音が聞こえてきそうですが、まったく汚らしくなく、「官能的」なんて言葉が浮かんだりしました。
 とても“汁っぽい”。
 

或る調書の一節

 警察(たぶん)での取り調べなんですが、内容とは裏腹にコントを読んでいるおかしさがあります。
 思わずバスの中で“なんやこれ”と笑ってしまいました。
 これは文中から何かを読み取るのではなく、ただ読んで笑う作品だと思います。

 読み終わったあと、良質の“だから何やねん”が出ます。
 こういう作品を書くのが谷崎潤一郎の好きなところです。

小さな王国

 これは『痴人の愛』のラスト部分を読んだときと同じ印象を受けました。
 この情けなさ、ペーソス、とても好きです。
 そしてやっぱり笑ってしまう。

白昼鬼語

 探偵小説風にグイグイ引き込まれて、最後のオチまで一気です。
 でも僕はこのラスト、それまでの話の勢いと比べると少し弱く感じました。
 辻褄なんて合ってなくて良いから、もっと突飛な変態的なオチがあったらなぁ。

青塚氏の話

 これのラストはちょっともう、それまで読んだ作品の余韻をかき消すラストです。
 「これを最後に持ってくるか」と編集者の意図を計りかねると同時に、「ようそんな昔にこんなの書いたな」とやはり谷崎潤一郎は(ある意味)すごいと思わざるを得ません。
 ダメな人も多そうですが。

オススメの一冊です

 殆ど全作品を揚げてしまいましたが、それほど濃い一冊です。
 全作品を通して感じるのは「古めかしさが全然ない」ということです。
 もちろん建物や風俗の描写は古めかしいものがありますが、それが余計に「怪奇」「ゴシック」な雰囲気を造り上げ、「ふしぎの館へようこそ」的な谷崎ワールドを造り出している気がします。

 発想力・アイデア勝負な一冊です。
 ぜひ一読を。

 最後に。
 表紙に谷崎の若いころの写真が載っていますが、往年の“堅太りおっさん”からは想像もつかないほど美男子です。

 あと、最後の「解説」はよくわかんない。

 

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