濃いー8作品を収録。『美食倶楽部』
著者/訳者:谷崎 潤一郎
出版社:筑摩書房( 1989-07 )
定価:¥ 1,050
Amazon価格:¥ 1,050
文庫 ( 447 ページ )
ISBN-10 : 4480023291
ISBN-13 : 9784480023292
開高健『最後の晩餐』に転載されていた『美食倶楽部』の一部を読み、“ぜったいこれは読もう”と決めていました。
本書には『美食倶楽部』を含む大正期の谷崎作品が8編収められています。
すべて「濃い作品」ですが、中でも特に印象に残ったものを。
美食倶楽部
タイトル通りの内容ですが、食べている描写が“汁にまみれている”様を想像させます。
“じゅくじゅく”いう音が聞こえてきそうですが、まったく汚らしくなく、「官能的」なんて言葉が浮かんだりしました。
とても“汁っぽい”。
或る調書の一節
警察(たぶん)での取り調べなんですが、内容とは裏腹にコントを読んでいるおかしさがあります。
思わずバスの中で“なんやこれ”と笑ってしまいました。
これは文中から何かを読み取るのではなく、ただ読んで笑う作品だと思います。
読み終わったあと、良質の“だから何やねん”が出ます。
こういう作品を書くのが谷崎潤一郎の好きなところです。
小さな王国
これは『痴人の愛』のラスト部分を読んだときと同じ印象を受けました。
この情けなさ、ペーソス、とても好きです。
そしてやっぱり笑ってしまう。
白昼鬼語
探偵小説風にグイグイ引き込まれて、最後のオチまで一気です。
でも僕はこのラスト、それまでの話の勢いと比べると少し弱く感じました。
辻褄なんて合ってなくて良いから、もっと突飛な変態的なオチがあったらなぁ。
青塚氏の話
これのラストはちょっともう、それまで読んだ作品の余韻をかき消すラストです。
「これを最後に持ってくるか」と編集者の意図を計りかねると同時に、「ようそんな昔にこんなの書いたな」とやはり谷崎潤一郎は(ある意味)すごいと思わざるを得ません。
ダメな人も多そうですが。
オススメの一冊です
殆ど全作品を揚げてしまいましたが、それほど濃い一冊です。
全作品を通して感じるのは「古めかしさが全然ない」ということです。
もちろん建物や風俗の描写は古めかしいものがありますが、それが余計に「怪奇」「ゴシック」な雰囲気を造り上げ、「ふしぎの館へようこそ」的な谷崎ワールドを造り出している気がします。
発想力・アイデア勝負な一冊です。
ぜひ一読を。
最後に。
表紙に谷崎の若いころの写真が載っていますが、往年の“堅太りおっさん”からは想像もつかないほど美男子です。
あと、最後の「解説」はよくわかんない。

えっ?
美男子?!
そうなると、いろいろ事情が変わってくる。
どういう事情があるのかわかりませんが、美男子です。
写真を調べても往年の堅太り状態の谷崎しか出てこないんですよねー。目元はおんなじ。