あまりに悲惨な『八甲田山死の彷徨』
著者/訳者:新田 次郎
出版社:新潮社( 1978-01 )
定価:¥ 540
Amazon価格:¥ 540
文庫 ( 331 ページ )
ISBN-10 : 4101122148
ISBN-13 : 9784101122144
明治35年の八甲田山雪中行軍の演習中に210名中199名名が死亡するという、『八甲田雪中行軍遭難事件』をテーマにした小説。この本を原作に、’77年高倉健主演で映画化されています。
「八甲田山」といえば高倉健が吹雪のなか軍服を着て行進している映画のイメージしかありませんでした。
くしくも北海道・大雪山系での遭難事件が相次ぐ中、雪山の恐ろしさを改めて感じました。
読み終えて事件の全容を理解すると共に、当時の日本軍はなんて無謀なことをしたのかと思いました。『海と毒薬』(遠藤周作)の米国人捕虜生体解剖実験と同じ種類の残酷さを感じます。
神風特効や人間爆弾「桜花」、さらには人間魚雷「回転」なんていう狂った平気を作った当時の日本軍についても考えてしまいます。
人間魚雷はイタリアやドイツでも開発され実戦配備されていたとあるので、やはりその時代が狂っていたんでしょう。
この本で描かれる遭難から死に向かう様は悲惨で、フィクションとはいえ気象学者でもある作者の説得力ある描写とも相まりその凄惨さは迫力があります。読んでいると電車の冷房を寒く感じたり。感じなかったり。
「寒い。わーわー」と奇声を発し始める女性も出た(asahi.com)
という文字通り息が詰まる感じは、この作品で隊員が力尽きていく場面でも感じました。やはり同じように発狂しています。寒さは人を狂わせる。
「的確な判断を出来ない人に生死を預けてしまった」という点が今回の事件と共通しています。
“隊員がこの地点で力尽きたよ”マップ付き。
