言葉もおいしい『最後の晩餐』
著者/訳者:開高 健
出版社:光文社( 2006-03-14 )
定価:¥ 660
Amazon価格:¥ 660
文庫 ( 406 ページ )
ISBN-10 : 4334740413
ISBN-13 : 9784334740412
ペットフードから皇帝の料理、精進料理にフランス料理と中華料理とホルモン焼きにワイン。
果ては人肉食までを豊富な語彙で彩ったエッセイ。
ことばの豊かさを味わう
- 「こんがり日焼けした若い娘の肌のように軽快で、乾いて、すこやか」?クロワッサン
- 「大衆食堂でも食べられるスブタはただもうキャラメルみたいにドド甘くねばついている」?酢豚
- 「ムッチリとしているのに歯切れがよく軽快で、おつゆがたっぷりと内包され、はんなりした甘みがある」?ホルモン
- 「まことに気品高い香りが肉の年輪からたちあがり」?サケ
- 「ブルゴーニュでは上品すぎるので、コクのある、腰の張ったのがいいネ」?ワイン
わかるような、わからないような表現ですが、その雰囲気は感じます。
特に最後の“腰の張っているワイン”は分かった気にさせてくれる表現です。
とにかく語彙が豊富で、読み終わったあとは少し賢くなった気分です。
ページが真っ黒なんですけど
まず文字が少し小さいです。
会話もあまり入りません。
改行もあまりなく。
そしてどのページも文字でビッシリ。
406ページとありますが、その1.5倍、2倍近くある分量を読んでいる感じです。
なーかなか進まない。
魚の記述に激しく同意
たとえば魚のうまい部分は、頭、目玉、カマ、内臓、砂ズリ、それから背の肉という順序になるかと私は思っている。
(原文ママ)
メインで食べている“背の肉”が一番下だとは思いませんでしたが、頭や内臓が美味しいのは同感です。
内臓がうまい例えとして、「ライオンは獲物を獲ると一番おいしい内臓から食べ始める」なんてよく言いますね。
内蔵とお酒の切っても切れない関係
ただ、内臓系はお酒とセットのようなものなので、お酒が飲めない人はまた違う順番になるかと思います。
ぷりぷりの生レバーにビール、甘にがい魚の肝に日本酒、たまりません。
昨日食べたさんまのハラワタは油がのっていて最高でした。
旬のものは安くてうまくて最高です。
ぼくが一番好きな内臓はカワハギの肝で、煮付けにしたそれはホントもう考えるだけで舌がトロけそうです。
あまりの旨さに『カワハギの肝』という本も出ています。
和田金のホルモンが食べられる店
文中にある“和田金のホルモン”。
和田金は松阪牛で有名な伊勢市にある超有名・高級焼肉店で自社牧場を持っています。
“大事に大事に育てられた超特級牛のモツ(ホルモン)の味はいかに”、と開高健たちが走り回る、というシーンがあります。
そのなかに“和田金のホルモンを扱っている店もいくつかあるらしい”、という記述があったのを美容室に置いてあったBRURTASの焼肉店紹介ページを読んでいるとき思い出しました。
読み進めると、まさにこれです。
焼肉 千力 本店
先日も近くのホルモン屋でわしわし内臓を食べましたが、次の日はコラーゲンゲンコラーゲンでお肌つるつるでした。
和田金のホルモンだとどうなるんだろう?。
本書の和田金ホルモンを食べている描写は、もっっっっのすごくうまそう・・・・。
「喫人」という行為について考える
そもそも人間が人間を食べることを「喫人」と呼ぶなんてこの本を読むまで知りませんでした。
古代中国、アウシュビッツ、アンデス山脈遭難事件などが取り上げられています。
あくまで食事としての文化から、または宗教観やその意味にまで触れているのでぜんぜんグロテスクではありません。
開高健の魅力は
“開高健(たけし)の博覧強記”と他の本で読んだことがありますがまさにその通りで、その知識と経験はうらやましいです。
それでいて少しも嫌みなところはなく、“感受性の強い人だなぁ”とその表現にフンフンうなずきながらぐいぐい読み終えました。
味覚と山の高さの関係
また、味覚のことを山の高さに例え、
“頂上から頂上へと移るばかりでは山の高さは分からない。普段は裾野にいて、たまに頂上に登るから山の高さが分かる”
というようなことを書いていました。
“ふだんからいいものばっかり食べるのはツマラないよ”、ということだと思います。
そうだそうだーさんせーさんせー。
なんだかいろんなことがわかった気になったのでした。
