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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
カテゴリー: エッセイ, オススメ本 — written by tsujio 09.12.22.(火) 07:42

「タクアン」ルポの最高峰?『河童のタクアンかじり歩き』妹尾河童

河童のタクアンかじり歩き (文春文庫)

著者/訳者:妹尾 河童

出版社:文藝春秋( 1992-12 )

定価:¥ 650

文庫 ( 350 ページ )

ISBN-10 : 4167535025

ISBN-13 : 9784167535025



 タクアンを通して見えてくるニッポン?大根好きにはたまらない、タクアンイラスト満載の一冊。

神津カンナの「解説」がすべて

河童さんは、タクアンの研究家であるだけでなく、譲渡カギ、弁当箱、ホテルの部屋、トイレ、ミジンコなど、実にまあ、いろいろなものの研究家である。そして河童さんのすごいところは、ただ単にそういう品々を研究すらだけではなく、それらを切り口にして、文化論や民族論、人間論を展開させるところにある。(原文ママ)

 かなり長く引用しましたが、つまりそういうことです。

タクアンから展開するテーマ

  • ○ 土呂久のヒ素公害?「魚が住まぬ澄みきった水」
  • ○ 腎臓のメカニズムと重要性?「腎臓の賢さに脱帽!」
  • ○ マタギ?「マタギの里は豪雪地帯」
  • ○ メディアの在り方?「雪の山陰に“故郷”をみた」
  • ○ 刑務所ルポ?「刑務所の二十五グラム」

 ざっと抜き出してみましたが、「公害」に「腎臓」、「マタギ」から「刑務所」まで。
 「解説」にあるとおりまさに“タクアンを切り口に”文化論や民族論、人間論が展開されます。

腎臓はすげぇなぁ

 なかでも特に興味深く、同時に感心させられたのは「腎臓の賢さに脱帽!」です。

 前田医院の前田昭二院長に腎臓の働きをレクチャーしてもらう、という形式で進むのですが、この説明が非常にわかりやすい。

 「腎臓の働きとはどういうものか」「人工透析とは何か」が小学生にもわかるように説明されています。
 『河童が覗いたヨーロッパ』でおなじみの作者のイラストもすごくわかりやすい。

 『河童が覗いた解体新書』とか出してくれないかな。
 『河童が覗いた脳科学』なんてたまらなくおもしろそう。

 “人間の臓器とはなんて良く出来てるんだろう”、と感心する一遍です。

“サクランボ・ユートピア”とはなんぞや

もう一つ、「雪の山陰に“故郷”をみた」で書かれているサクランボ・ユートピアも興味深かった。

サクランボ・ユートピアとは、東京キッドブラザースの主宰者東由多加が、故郷を持たない者たちのユートピアを作るために立ち上げたプロジェクトである。土地を購入するために3600人が千円の会費を払い[1]、 1972年に約30名の都会の若者たちがユートピア(理想的な故郷)を求めて佐治村に移住して来た。しかし若者達は夢と現実のギャップを思い知り、村民との交流もままならないまま都会に戻り、プロジェクトは頓挫した(Wikipedia)

 ヒッピー全開のエピソードですが、これも入りは“タクアン”です。
 「佐治村のタクアン」を取材する内に“ここがあのサクランボ・ユートピアの地だったのか”と気づいた作者。

 そこからは村人への聞き込みにとどまらず、主催者であり東京キッドブラザース設立者の東由多加へのインタビューまで行います。

 まるで佐治村(東京キッドブラザース?)を舞台にしたドキュメンタリーのようで読んでいて引き込まれました。

 東由多加さんはあの「力石徹の告別式」をしたり「寺山修司らと天井桟敷を結成」した人だったんですねぇ。
 東京キッドブラザースには柴田恭兵も在籍していたとか。

良質のルポルタージュ

 タクアンへの知識はもちろん、タクアンを通して見えてくる景色があります(なんやそれ)。
 マタギのイラストが味わい深くて素敵な一冊、ぜひ一読を!
 

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カテゴリー: エッセイ, オススメ本 — written by tsujio 09.12.18.(金) 06:00

みうらじゅんのひりひりするエッセイ『カリフォルニアの青いバカ』

カリフォルニアの青いバカ (河出文庫)

著者/訳者:みうら じゅん

出版社:河出書房新社( 1996-04 )

定価:¥ 588

Amazon価格:¥ 588

文庫 ( 206 ページ )

ISBN-10 : 4309472982

ISBN-13 : 9784309472980



 「マイブーム」の生みの親であり「ボブ・ディラン」の信者、さらには歌手birdの夫(知らなかった!)みうらじゅんの青春エッセイ(敢えて)。

テレビのみうらじゅんとは違いますよ

 みうらじゅんというとマイブームをはじめ仏像ブーム、とんまつり などキャッチーなネーミングの造語を作った人のイメージが強いかも知れません。

 『タモリ倶楽部』によく出てる人です。

中高生は必読じゃないか

 本書の前書きに

「自分にイライラしていた時期の文章である」

 とあるように、ある意味「おもしろいおじさん」として取り上げられるテレビのイメージとは少し違う印象を受けると思います。

 ぼくは高校時代、まさに思春期全開のイライラ期間にこの本を読みました。

 以来トイレで、お風呂で、腐るほどあった暇な時間に、それこそめくりすぎたページがバターになるくらい読み返しました。

 206ページしかないイラスト入りの、文字と行間が大きい“軽めの”本ですが読み終えると“スッキリ”したのを覚えています。

“こんな奴よく居る”、がテーマ

 取り上げられるのは誰の周りにも“よく居るイヤな奴”だったり、“イナカモノ”だったり“ヤな男”だったり“ヤな女”だったり、“ナマイキなガキ”だったりします。

 みうらじゅんがそれぞれに対して“おかしいところ”を指摘していて、“そうやそうや”と代わりに文句を言って貰ったようにスッキリするし悪意に満ちたイラストも楽しいです。

若い人に読んで欲しいなぁ

 でも、おもしろいと思ったあとなんだか切なくなるのはみうらじゅんの“イライラ”がその明るい文章の裏に感じられるからだと思います。

 内容は3部に別れており、第1部「亜細亜ボンノウ教典」、第2部「おまえはもう死んでいい奴」ときてラストは「薔薇色なんてありえない」です。

 最後でペーソス全開。

 第1部でクスっとさせて2部の黒い笑いでページをめくるスピードが速くなり、最後にしみじみさせられるので“暇なときにもっかい読んでしまう”わけです。

 掲載されているエッセイ『ナイスガイを守り抜いて』で

「男同士にしかわからない友情という耳たぶまで真っ赤になるような関係」

 について書かれていますが、まさにこの本自体が女性向きではないと思います。

 男じゃないと同意出来ない「感覚」も多いように感じます。

とにかく読んでみて

 男、それも中高生で思春期の荒海にいる男の子が読むと感じるものが多いのではないでしょうか。

 ただ、単行本自体は1990年の発行なので現在の若い子にはよくわからない単語もあるかと思います(「マイケル・J・フォックス」とか「いなかっぺ大将」はビミョー?)。

 このエントリーを書くにあたって、久しぶりにペラペラしましたが、やっぱ良い本だと思います。
 特に「薔薇色なんてありえない」はいい。
 余韻が。

 通勤はもちろん通学時間でもすぐ読めるので、ぜひ読んで欲しいです。 

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カテゴリー: エッセイ, オススメ本 — written by tsujio 09.10.23.(金) 07:52

寝る前にパラパラする幸せ『河童が覗いたヨーロッパ』

河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)

著者/訳者:妹尾 河童

出版社:新潮社( 1983-07 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 302 ページ )

ISBN-10 : 4101311013

ISBN-13 : 9784101311012



 1年間で歩いた国は22カ国。泊まった部屋は115室。舞台美術家の著者が、心優しい目と旺盛なる好奇心で、ノート片手に覗いた“手描き”のヨーロッパ。(裏表紙より)

大人の絵本

 晩ご飯を食べてお酒も呑み、お風呂に入って身体ぽかぽか“さぁ寝よう”、そんなときに2?3ページ読むと自然にまぶたが降りてくる。

 15年前、高校生のとき買ったこの本を最近引っ張り出し、そんな幸せな日々を過ごしています。
 
 Google Earthで簡単に世界旅行が疑似体験出来るようになりましたが、妹尾河童さんが実際に見て体験した“大人の絵本”は発行から31年経った今も魅力的です。

真上から部屋を見下ろした絵を観るだけで楽しい

 泊まったホテルの部屋がスケッチで描かれ、その横にこれまた手書きで解説や感想が書かれています。
 河童さんのノートが友人の間をまわり評判が評判を呼び出版された、というエピソードも頷けます。

 これを出版しないのは勿体ない。

詳細なスケッチもさることながら

 絵を見て楽しいのはもちろんですが、文章も河童さんの飾らない言葉で綴られておりスルスル読めます。
 そのリズムの良さとスケッチが、睡眠を呼び込んでくれます。

お国柄の違いも

「日本人は知らない人同士になるとエゴイストになる」
 部屋のスケッチのみに留まらず、各国のちがいにも触れられています
 その中で、パリの日本人旅行者についてのものがあります。

筆者が実際にパリで見たスウィングドアの光景

 “日本人旅行者はスウィングドアをあけて自分が通るとそのまま行ってしまう、後ろにいた人は跳ね返ってきたドアが顔に当たりそうになりびっくりする”

 ぼくは電車通勤をしていますが、スウィングドアを通った後振り返りもしない人は毎日見ます。
 また、駅で足を踏まれたことは何度もあります。

他人にはエゴイストになる日本人

 それはおっちゃんだったりおばちゃんだったり若い男性だったり女性だったりしますが、「あ、すいません」「あ、ゴメン」のひと言はありません。

 殆どの人が他人の足を踏んでも“知らん顔”です。

 電車の中でデカイ声で携帯を使っているのは若い人だけじゃありません。
 おじさんもおばさんも唾を飛ばし、握りしめた携帯に怒鳴っています。

 そうか、ああいう人たちは「あかの他人に対してエゴイストになる日本人の典型」なんですね。

『覗いた』シリーズ

 河童さんは『仕事場』やら『インド』やら『日本』やら『トイレ』やら、いろんなものを覗いて廻っています。
 なかでも海外に興味のある人に本書はオススメです。

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カテゴリー: エッセイ, オススメ本 — written by tsujio 09.10.14.(水) 06:00

言葉もおいしい『最後の晩餐』

最後の晩餐 (光文社文庫)

著者/訳者:開高 健

出版社:光文社( 2006-03-14 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 406 ページ )

ISBN-10 : 4334740413

ISBN-13 : 9784334740412



 ペットフードから皇帝の料理、精進料理にフランス料理と中華料理とホルモン焼きにワイン。
 果ては人肉食までを豊富な語彙で彩ったエッセイ。

ことばの豊かさを味わう

  • 「こんがり日焼けした若い娘の肌のように軽快で、乾いて、すこやか」?クロワッサン
  • 「大衆食堂でも食べられるスブタはただもうキャラメルみたいにドド甘くねばついている」?酢豚
  • 「ムッチリとしているのに歯切れがよく軽快で、おつゆがたっぷりと内包され、はんなりした甘みがある」?ホルモン
  • 「まことに気品高い香りが肉の年輪からたちあがり」?サケ
  • 「ブルゴーニュでは上品すぎるので、コクのある、腰の張ったのがいいネ」?ワイン

 わかるような、わからないような表現ですが、その雰囲気は感じます。
 特に最後の“腰の張っているワイン”は分かった気にさせてくれる表現です。

 とにかく語彙が豊富で、読み終わったあとは少し賢くなった気分です。

ページが真っ黒なんですけど

 まず文字が少し小さいです。
 会話もあまり入りません。
 改行もあまりなく。

 そしてどのページも文字でビッシリ。
 406ページとありますが、その1.5倍、2倍近くある分量を読んでいる感じです。
 なーかなか進まない。

魚の記述に激しく同意

たとえば魚のうまい部分は、頭、目玉、カマ、内臓、砂ズリ、それから背の肉という順序になるかと私は思っている。
(原文ママ)

 メインで食べている“背の肉”が一番下だとは思いませんでしたが、頭や内臓が美味しいのは同感です。

 内臓がうまい例えとして、「ライオンは獲物を獲ると一番おいしい内臓から食べ始める」なんてよく言いますね。

内蔵とお酒の切っても切れない関係

 ただ、内臓系はお酒とセットのようなものなので、お酒が飲めない人はまた違う順番になるかと思います。
 ぷりぷりの生レバーにビール、甘にがい魚の肝に日本酒、たまりません。

 昨日食べたさんまのハラワタは油がのっていて最高でした。
 旬のものは安くてうまくて最高です。

 ぼくが一番好きな内臓はカワハギの肝で、煮付けにしたそれはホントもう考えるだけで舌がトロけそうです。
 あまりの旨さに『カワハギの肝』という本も出ています。

和田金のホルモンが食べられる店

 文中にある“和田金のホルモン”。
 和田金は松阪牛で有名な伊勢市にある超有名・高級焼肉店で自社牧場を持っています。

 “大事に大事に育てられた超特級牛のモツ(ホルモン)の味はいかに”、と開高健たちが走り回る、というシーンがあります。

 そのなかに“和田金のホルモンを扱っている店もいくつかあるらしい”、という記述があったのを美容室に置いてあったBRURTASの焼肉店紹介ページを読んでいるとき思い出しました。

 読み進めると、まさにこれです。
 焼肉 千力 本店

 先日も近くのホルモン屋でわしわし内臓を食べましたが、次の日はコラーゲンゲンコラーゲンでお肌つるつるでした。

 和田金のホルモンだとどうなるんだろう?。
 
 本書の和田金ホルモンを食べている描写は、もっっっっのすごくうまそう・・・・。

「喫人」という行為について考える

 そもそも人間が人間を食べることを「喫人」と呼ぶなんてこの本を読むまで知りませんでした。
 古代中国、アウシュビッツ、アンデス山脈遭難事件などが取り上げられています。

 あくまで食事としての文化から、または宗教観やその意味にまで触れているのでぜんぜんグロテスクではありません。

開高健の魅力は

 “開高健(たけし)の博覧強記”と他の本で読んだことがありますがまさにその通りで、その知識と経験はうらやましいです。

 それでいて少しも嫌みなところはなく、“感受性の強い人だなぁ”とその表現にフンフンうなずきながらぐいぐい読み終えました。

味覚と山の高さの関係

 また、味覚のことを山の高さに例え、

“頂上から頂上へと移るばかりでは山の高さは分からない。普段は裾野にいて、たまに頂上に登るから山の高さが分かる”

 というようなことを書いていました。

 “ふだんからいいものばっかり食べるのはツマラないよ”、ということだと思います。
 そうだそうだーさんせーさんせー。

 なんだかいろんなことがわかった気になったのでした。

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カテゴリー: エッセイ — written by tsujio 09.09.09.(水) 07:32

太宰治の旅行エッセイ?『津軽』

津軽 (新潮文庫)

著者/訳者:太宰 治

出版社:新潮社( 2004-06 )

定価:¥ 420

Amazon価格:¥ 420

文庫 ( 255 ページ )

ISBN-10 : 4101006040

ISBN-13 : 9784101006048



 昭和19年津軽風土記の執筆を依頼された太宰が、3週間にわたって津軽を旅行したときの記録。

え?太宰治が「やっちゃった」?

私はその、甚だ卑しいことを、やっちゃった。(原文ママ)

 くだけた文章に“ぎょっ”としました。ものすごい違和感。「歴史上の偉大な作家」とのイメージが強いもので。
 紀行文というかエッセイというか小説のようでもあり、太宰治の「ユーモア」さえ感じます。

旅の目的はなんなのか

 作者が36歳のときに小山書店の依頼をうけ、津軽の風土記を書くため久しぶりに帰郷する、とういのが始まりです。
 旧家出身の太宰が昔の知り合いに会いながら、最終的には育ての親「たけ」との再開を果たす、というのがテーマでしょうか。

酒ばかり呑んでいる太宰治

 日本酒やらリンゴ酒やら。この時代にビールまで呑んでいます。あったんですね。
 ともかく呑んでいるシーンが多いです。

「県」が「国」という感覚

 「国」というと日本であったりアメリカであったり中国などを思い浮かべますが、この本の舞台となる昭和初期、昭和19年頃は「県=国」という考え方も一般的だったようです。
 同じ青森県内でも「津軽」や「金木」といった地域がまるで違う特色をもつ土地のように書かれているのがおもしろいです。

太宰治を身近に感じる一冊

 「太宰治もふつうの人」という、当たり前すぎる事実に気づく一冊でした。
 ふつうに話し、ふつうに呑んで、ふつうに旅しています。

 文字密度は高くびっちり書かれていますが、内容が内容だけにスイスイ読めました。

 ラストの盛り上がりはしみじみ良かったです。

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