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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.10.15.(木) 06:00

「ゲームブック」を思い出しました。『クリムゾンの迷宮』

クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

著者/訳者:貴志 祐介

出版社:角川書店( 1999-04 )

定価:¥ 700

Amazon価格:¥ 700

文庫 ( 393 ページ )

ISBN-10 : 404197903X

ISBN-13 : 9784041979037



 「ホラー」よりは「SF」に近い気がする、日本ホラー界の新たな地平を切り拓く(?)傑作長編。

貴志祐介のリアリティはこんな設定でも揺るがないのか?

 ぼくが貴志祐介を読んでいて楽しいのは、
 “これめっちゃ取材してるやろな?”
 と思わずにはいられないリアリティがあるからです。

 リアリティ=説得力なので、どんな設定でも安心して、納得して読み進めていくことができました。

 しかし本作は主人公が
 「この世のものとは思えない異様な光景のなかで」
 目覚めることから始まります。
 
 “これどうするつもりなんやろか?”
 と思った引っかかりは結局最後まで解消されませんでした。

これ「ゲームブック」じゃない?

 1980年代後半?90年にかけて、ぼくが小学校高学年のころ「ゲームブック」という本が流行りました。

 物語の途中で「さぁこういう場合キミならどうする?!」という質問があり、

 「Aを選ぶなら116ページへ!」
 「Bの場合は123ページへ!」

 という具合にストーリーが分岐していき、異なったエンディングを迎える、という“小説”です。
 ちなみに印象に残っているのは『ドラゴン・ラリー』というゲームブックです。

 なつかしくなってAmazonで調べてみると、なんと3,800円!
 プレミアついてるんですねぇ。

 本書でも「ゲームブック」という単語がちょくちょく出てきますので、貴志祐介もこれをベースにしたんでしょうね。

やっぱり舞台は日本がいいなぁ

 Amazonのレビューでは評価が高いですが、イマイチ入り込めませんでした。

 やはり小学生のときに読んだゲームブックを連想してしまい、醒めてしまうというか。

 年齢が20代以下の人たちはきっと感じ方が違うんでしょうね。
 ホラーというかSF、読み進めるとSFというかファンタジーでした。

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カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.09.21.(月) 06:00

芥川賞候補作だった『キオミ』も読んでみた

キオミ (角川文庫)

著者/訳者:内田 春菊

出版社:角川書店( 1998-04 )

定価:¥ 500

Amazon価格:¥ 500

文庫 ( 247 ページ )

ISBN-10 : 404344401X

ISBN-13 : 9784043444014



 男女関係を赤裸々(古い)に描いた作品集。収録作の『キオミ』は芥川賞候補作になったそうです。

読んでみたら短編集でした

 本作は短編集であり、芥川賞候補になった『キオミ』を含む7作が収められています。
 「性愛の底に流れる心のせつなさと揺れる男女の愛を描いた作品(裏表紙)」6作とまったくジャンルの違う短編がひとつ。

収録作

  • あたしの欲しいもの
  • 勃たなかった男
  • シタダシレッテル
  • バージン
  • スローロリス螺旋
  • 夜の足音
  • キオミ

読む人によってぜんぜん違うやろなー

 「男の人と女の人」、「今までどういう経験をしてきたか(恋愛の)」によってずいぶん受け取り方が違うと思います。
 読む人の共感の度合いで大きく左右されるような。
 ん?それはどの本でも同じかな?

 ぼくは女性の心理に詳しくないので共感も否定も出来ず、ただただ「ああ、そ、そうなんですね」とオロオロするばかりでした。
 完全に受け身。

この本は恋愛に使えるか

あるんかそんなこと其の一

 「恋愛経験豊富な大人の女性に苦しい片想いの恋をしている」方は、完全に「これは自分の体験だ」と信じられるまで繰り返し繰り返し本作を読み込み自己催眠をかけることで女性に対する「ゆとり」が生まれる気がしないでもないです。

あるんかそんなこと其の二

 また、 内田春菊の読者は女性が多い気がするので、「内田春菊読んでるんですよ」とさりげなく言うことで意中の女性(言い方が古い)と会話をするきっかけが出来るかも知れません。
 読んでる女性はちょっと年齢層が高いような気がしますが。

『スローロリス螺旋』みたいな作品をもっと読みたい

 この短編は他とまったく違い、女も男も嫉妬も駆け引きもセックスも出てきません。
 ただ、ぼくはこれすごく好きです。
 「しょーもなー」となる、何がどうなるわけでも無い作品なのですが、すごく楽しい。
 ホントにこういう人居そう。
 
 こういうのもっと読みたいです。

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カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.09.16.(水) 07:53

『ファザーファッカー』で心が揺れる

ファザーファッカー (文春文庫)

著者/訳者:内田 春菊

出版社:文藝春秋( 1996-10 )

定価:¥ 420

Amazon価格:¥ 420

文庫 ( ページ )

ISBN-10 : 4167267047

ISBN-13 : 9784167267049


 その衝撃的な内容から発売当時ベストセラーになった内田春菊の小説。

内田春菊を敬遠してしまう理由

 内田春菊の描くマンガと同じ露骨な性描写がありそうで、それが活字だとマンガよりストレートだと思いなかなか読む気が起きませんでした。
 露骨な性描写を苦手に感じている人も多いのではないのでしょうか。

やっぱりタイトルのまんまだった

 先述した「読むのを敬遠してしまう理由」に付け加えて『ファザーファッカー』というあまりにもあまりもなタイトルがあります。

 キャッチーなタイトルですが、“「近親相姦」の話だったら読みたくない”と思っていました。

 読んでみると、正確には「近親」ではありませんでしたが、それと同じくらいキツイ内容でした。
 ほぼタイトル通りの内容に引いてしまう人も多いと思います。

ストーリーはサバサバすすむ

 実際に行われた酷い行動に対して、客観的ともいえる淡々とした描写のせいで、視点がその酷い行為自体ではなく、そうなった状況と主人公の心理に行きます。

 重いテーマを扱っているにも関わらず、思ったより読後の不快感は残りませんでした。
 それでも読み進めるのが辛い人も多いと思います。

フィクションとは思えないリアルさ

 フィクションだと思いたいのですが、フィクションだとは思えないリアルさを感じる箇所がいくつもあります。

 “筆者が実際の体験を元に書いた小説”という意見が多いのですが、“内田春菊が自身のエッセイの「あとがき」で「実体験じゃないのにそういうことばかり(自身の経験か)聞かれてうんざりする」と書いていた”という意見もあり、積極的に後者を支持したいですがどちらが本当なのかわかりません。

 本書の解説“にはそういう辛い体験をした内田春菊”というような記述もあって、どうやら本当らしいですが。

 ま、「小説」という形をとっているので、どちらでもいいんでしょうけど。

「性的虐待」がもつ陰惨なイメージに心臓がギュッとなる

 サバサバした文体のオブラートにくるんでみても、非人道的な行いは読むのがしんどいと感じる人は多いと思います。

最初から最後まで救いがない

 「普通の日常にある日突然起こった事件」、ではなく、「起こるべくして起こった」と思われる不穏な描写がのっけから続きます。

 あまりに酷い生活をそれでも何とかこなしていく主人公の「強さ」には、「感心する」というよりむしろ「引いて」しまいます。

積極的に読みたい話では、ない

 たとえフィクションだとはいえ、読後どう受け止めていいのかわからないところが残尿感たっぷりでした。

読む人の経験によって受け取り方がぜんぜん違うと思う

 Amazonのレビューにもありましたが、子供時代に暴力を受けた経験のある人は“この小説を読んで励まされた”そうです。
 
 いろんな意味で心が揺さぶられる本だと思います。

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カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.09.10.(木) 07:47

『禁色』、三島由紀夫と同性愛

禁色 (新潮文庫)

著者/訳者:三島 由紀夫

出版社:新潮社( 1964-04 )

定価:¥ 780

Amazon価格:¥ 780

文庫 ( 580 ページ )

ISBN-10 : 4101050058

ISBN-13 : 9784101050058


 女を愛することの出来ない同性愛者の美青年を操ることによって、かつて自分を拒んだ女たちに復讐を試みる老作家の悲惨な最期。(出版社からのコメント)

なんだか近寄りがたかった三島由紀夫をはじめて読んだ

 「自衛隊に乱入、割腹自殺した(三島事件)」、というだけでも怯むのに、「盾の会」「男色家」という言葉にも怯んで“三島由紀夫はむずかしい”という先入観を持っていました。

 たまたま家に転がっていた本作をたまたま読んでみると意外や意外、「ふつう」の小説でした。

あからさまな同性愛描写にびっくり

 タイトルの『禁色』は“男性が男性に恋をしてしまうこと”なのか、“当は同性(男性)が好きなのに異性(女性)と結婚してしまう”という「タブー」を犯すことを指すのか。

 当然前者である気がしますが、読んでいると三島は男性が男性を愛することを「背徳的」だと捉えていない気がします。

 むしろ「美しい」ものだとしているフシがあります。

 ということは、美しい関係性である「同性愛」なのに「世間体」というものに屈し女性と結婚する男性に対しての「そんなことしちゃダメよ」「それはタブーなのよ」の『禁色』なのでしょうか。

若いころの美輪明宏のような美少年が出てきた

美輪明宏と三島由紀夫の結びつき

 “美輪明宏と三島由紀夫は恋人同士だった”という話を読んだことがあります。
 以前テレビで美輪明宏が“三島先生は?”と語っていたのを観たこともあります。

うつくし過ぎる美輪明宏

 そんなこんなでGoogle画像検索を使い美輪明宏の青年時代を検索してみると、これがスゴイ美形
 まるでギリシア彫刻のような彫りの深い日本人離れした顔を見ると、恋をしてしまう同姓の気持ちもわかります。
 この写真より綺麗な女性というのもすぐには思いつきません。
 美しい。

やっぱりモデルは美輪明宏?

 「スピリチュアル妖怪」と化した現在にも目元に面影がある、気がしないでもないです。
 作中の美青年「悠一」も若かりし美輪明宏をモデルにしているのではないでしょうか。

 「うつくしさ」の描写に美輪明宏の影がチラホラ。
 とすると老作家が三島由紀夫か。

骨太な文章

 「同性愛」を全面に出した作品だからでしょうか。
 文章はとても“男らし”いです。

 ※“三島由紀夫が大薮 春彦の愛読者だった”、というのはなんだか「そのまんま」な気がします。

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カテゴリー: 小説 — written by tsujio 09.09.07.(月) 07:48

なんだか迫力『串刺し教授』

串刺し教授 (新潮文庫)

著者/訳者:筒井 康隆

出版社:新潮社( 1988-12 )

定価:¥ 460

文庫 ( 274 ページ )

ISBN-10 : 410117122X

ISBN-13 : 9784101171227



 最も完成度の高い短編小説に贈られる川端康成文学賞。’85年の最終候補まで残った作品。

[『きつねのお浜』と『妻 四 態』

 電車の中で「ニヤリ」としてしまったのがこの二編です。
 
 読んでいて、“この本が発行された時代は「活字」にまだまだ力があったんだろうな”と思いました。
 ある意味“実験的”なこの本が発行されていた時代のふところの深さを感じます。
 「若い人から年配の人まで、みんな本読んでたんだろうなー」と思わせるような。

 本を読む人が少なくなった現代ではこういう本は出版されないんじゃないのかな。

筒井康隆の初体験

 マスターベーションをしている男子高校生がオルガスムスに達する瞬間テレポーテーションしてしまう短編、『郵性省』。

 そのあまりにもバカらしい短編に笑った記憶は10年以上経った今でも覚えています。
 久しぶりに読む本作には17編の短編が収められていましたが、基本的に何も変わってませんでした。

 無茶苦茶で、下品で、くだらなくて、勢いがすごくて。
 この本で感じる迫力は、筒井康隆の「鬼気迫る」、とでもいいたくなるような文章に対してです。
 テーマはほんとくだらないことが多いんですが、それを構成する力と勢いのある文章でどんどん読んでしまいます。
 
 筒井康隆は短編が多いので、電車の中で読むにはぴったりです。
 

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