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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
Category: 小説 — written by tsujio 09.08.27.(木) 07:54

『ぼっけぇ、ぎょうてえ』はそねーなにぎょうてくない

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)

著者/訳者:岩井 志麻子

出版社:角川書店( 2002-07 )

定価:¥ 500

Amazon価格:¥ 500

文庫 ( 211 ページ )

ISBN-10 : 4043596014

ISBN-13 : 9784043596010



第六回日本ホラー小説大賞受賞。第13回山本周五郎賞受賞。 

ぎょうてえのは岩井志麻子本人か

 岩井志麻子をはじめて見たのは探偵ファイルの記事でした(検索するが見つからず)。掲載されていた下品さ炸裂の記事と、“酒と男を語る深夜三時の場末のスナックママ”、という写真は強く印象に残り、本屋で見かけ購入してしまいました。

 「ぼっけぇ、ぎょうてえ」は岡山弁で「とてもこわい」という意味だそうです。
 裏表紙だけ読み、むかし1人暮らしの部屋で深夜に『リング』を興味本位で観てしまったときの恐怖と後悔を思い出して少したじろぎました。
 

なんだか、いや

 読んでみると、「ホラー小説」というより「怪奇小説」というほうがぴったりくる感じです。
 舞台も明治時代だったり、貧しい山村だったり全体的にトーンがくらーいです。
 「なーんか嫌な雰囲気やな」という、「恐い」というより「不快」さを読んでいて強く受けました。

 これまた小学生のとき、紙芝居のおじいさんがダミ声で語る「お岩さん」を思い出しました。
 そう、「お岩さん」な感じです、収録されている三編は。

 登場人物もじめっとしてます。

 “斧で手足切断されて血がどばーっチェーンソーで胴体切られて血がどばーっ、でも主人公が立ち去ったあとにピクピク動いて復活します、基本的に死なないんだけど十字架だけはご勘弁、指で形をつくられただけで悲鳴を上げます、だってわたしもクリスチャン”

 という海外ホラーの単純明快さ(知りませんが)はなく、ただひたすら“いやー”な感じだけが残ります。

 なにより貧乏がいちばん恐いなぁ、と本作を読んで思ったのでした。

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.26.(水) 07:53

『リレキショ』で投げ出すことを考える

リレキショ (河出文庫)

著者/訳者:中村 航

出版社:河出書房新社( 2005-10-05 )

定価:¥ 630

Amazon価格:¥ 630

文庫 ( 208 ページ )

ISBN-10 : 4309407595

ISBN-13 : 9784309407593


第39回 (2002年) 文藝賞受賞作品

きっつー・・・

 この本を読むまで、読み始めた本は最後まで読むことにしていました。

 最後まで通して読まないとおもしろいかどうかなんてわからないと思っていたからです。

 この本を読んで「途中で読むのをやめる方がいいこともある」とはじめて思いました。

 “最後まで読まないと”なんて自己満足な義務感で読むのはバカらしいことを気づかせてくれる一冊でした。

 その本が良いか悪いかなんて読む人の主観が大きいと思いますし、この本はぼくにとってはまったくダメでした。

 「こども大人」の頭の中を覗いているような

 “からだはこども、でも頭脳はおとな”(こんなんやっけ?)のコナン君とは真逆、“からだはおとな、でも頭脳はイタタタ小学生”でしょうか。

 裏表紙に「都会の青春ファンタジー」とありますのでこれで良いんでしょう。「青春ファンタジー」ってなんやねん、定義を教えてくれやっ。

 「ファンタジー」というか「妄想」がぴったりくるんじゃないでしょうか。“都会の青春妄想”となると一気にサスペンス、病んだ現代社会ってかんじですね。

中村 航について想像をめぐらしてみる

 小学校の昼休み、外に遊びに行かず机に覆い被さって「ものがたり」をノートに書き続けるちょっと内気な生徒の机から、掃除の時間にホウキでチャンバラしていたやんちゃな男子がよろけて机にぶつかった際に「バサッ」と落ちたノート一冊。

 「なんやこれ?」と詮索好きなおばちゃんのごとく何のためらいもなくノートを広げると女の子のような細かい字がビッシリ。

 「なんやなんや」と三人でのぞき込んで読んでいくと主人公がお姫様の物語、でもまてよ、これってアイツ自分のことちゃうの?え?でもアイツ男やん、ホラここに書いてあるようなメガネアイツしてたやん、でもなんでお姫様がメガネしてんねん、あ、ちょっとまってこれおまえのことちゃうの?え、どれどれ見せて見せて、あ!ホンマや!「鼻と眉毛の下に大きなホクロがある」って書いてある、え?おれどうなんの?先めくれや先、あ!死んでる!なんでトラックに轢かれてんねん!イラストまで書いたぁるやんけ、ごっつ血ぃ出てるでおまえ確実に死んでるわ、でもなんでお姫様がトラック運転してんねん、あ、こないだおまえアイツのこと「女みたい」ってからかってたからちゃうん?アイツ泣きかけてたもん、マジで?!・・・まぁええわ、でもまぁアイツちょっとヤバない?

 三人は顔を見合わせそっとノートを机に戻す夕暮れの教室、外ではスズムシが鳴いており、ああ、もうすっかり秋ですね、という作者の子供時代に思いを馳せてしまうほどです。

世間の人とのずれ

 『ゴールデンスランバー』を読んだときにも思いました。「みんなおもんないって思ってるやろ」と。でも検索してみると肯定的な意見が殆ど、否定的な意見は2chにチラホラあるだけ。この本も同じでした。

 やっぱり世間の人、というか10代20代の人とはおもしろいと思う感覚がズレてきてるんかなー。

 ソッと背中を丸める初秋の朝なのでした。

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Category: オススメ本,小説 — written by tsujio 09.08.25.(火) 07:00

『破戒』する

破戒 (新潮文庫)

著者/訳者:島崎 藤村

出版社:新潮社( 2005-07 )

定価:¥ 660

Amazon価格:¥ 660

文庫 ( 500 ページ )

ISBN-10 : 4101055076

ISBN-13 : 9784101055077



島崎藤村が穢多・非人ををテーマに描いた作品。主人公は被差別部落出身の小学校教師。

穢多・非人は社会の授業で習っただけですが

 『たかじんのそこまで言って委員会』で猿回しの村崎太郎さんが自身は被差別部落の出身であることを話しておられました。
 また、野中広務も部落出身をカミングアウトしていると知りました。

 でも、部落差別に関心を持ったきっかけで大きかったのは白戸三平の『カムイ伝』を読んだからです。マンガですけどあまりに酷い生活してたので。
 主人公が“自身が部落出身者”でありそれを“カムアウトするかどうかで”苦悩する様は、『罪と罰』の主人公が自分の犯した殺人で苦しむ様とよく似ていました。
 
 “バレそでバレないうっふん”な状態に苦しみ続け、最終的に「破戒」する場面はドラマティックでした。

後書きがおもいっきり批判なんですけど

ぼくが読んだのは新潮文庫ではなく岩波文庫版です。

 「あーおもしろかった」と満足して『あとがき』を読むとこれが思いっきりこの小説の問題点の指摘です。
 解説者は野間宏

それゆえにこの小説は、部落の問題を本質的にはなんら解決しないところに結末を見いださなければならなかったのである。

あらら

この小説が差別される部落民の問題をとりあげ日本で最初の近代小説を確立しようとしながら、逆に多くの部落の人たちを傷つけ、苦しめてきた原因がある。

えー

“『破戒』も厳しい批判を受ける必要がある”

そんなに?!

 『少年H』を読んだときにも思いましたが、やはり「戦争」や「差別」を取り扱った小説は何らかの形で批判されるんでしょうか。

 でも『あとがき』でこんなこと書かなくてもいいのに。

 なんだかむずかしいですね。
 

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.17.(月) 07:00

『少年H』で感じた3つのこと

少年H(上) (講談社文庫)

著者/訳者:妹尾 河童

出版社:講談社( 1999-06-09 )

定価:¥ 710

Amazon価格:¥ 710

文庫 ( 478 ページ )

ISBN-10 : 4062645904

ISBN-13 : 9784062645904



少年H(下) (講談社文庫)

著者/訳者:妹尾 河童

出版社:講談社( 1999-06-15 )

定価:¥ 710

Amazon価格:¥ 710

文庫 ( 502 ページ )

ISBN-10 : 4062645912

ISBN-13 : 9784062645911



 作者妹尾河童の戦争体験をもとにした小説。ベストセラーになったあと教科書にも採用されています。
 同時に、“『少年H』は歴史誤認だ”という批判本も何冊か出ています。

『少年H』を読んで感じた3つのこと

 冒頭でも書きましたが“『少年H』は歴史誤認だ”という意見や批判はあるようです。 
 歴史の実際は判りませんので、以下ははあくまでこの本を読んでの感想です。 

 1.戦時中の日本は戦争なんて出来ないくらい貧しい

 2.日本軍とマスコミは国民を騙し続けていた

 3.妹尾河童は子供の頃から知りたがり

 1は、大砲や鉄砲の弾を造る原料として家庭の鍋や釜を供出させたり、道に落ちているくず鉄を小学生に集めさせる貧乏な国が戦争に勝てるわけがないと思いました。

 2、自国民をだまし、人・物・金を搾取し続けた日本軍の指導者達とそれを助長したマスコミの罪は重いと感じます。

 3、『河童が覗いた?』で感じる妹尾河童の知りたがりと行動力は子供の頃からで、「子供時代から変わってないなー」と思いました。

 戦時中、日本人を苦しめていたのは戦争の相手国というより日本軍だったという想いを強く持った次第です。
 根本的にそれは今でも続いているような。軍ではなく政府ですが。

『少年H』への批判について

 戦争を題材としていると、その小説がおもしろいかどうかとは別の部分で攻撃されるんだなと思いました。
 ぼくはこの本を「小説」として読んだだけなので“この部分が史実と違っている、ここも違う!”という意見があり、また実際そのとおりだとしても気にはならないです。
 本当に太平洋戦争のことを知りたければ専門書を読みますし。
 問題になるのは教科書や学校の推薦図書になり「子供が読む」からでしょうね。

小説もいいけどスケッチもね

 妹尾河童の『河童が覗いたヨーロッパ』『河童が覗いたインド』『河童が覗いたトイレまんだら』等のルポは何度も繰り返し読みました。
 天井から見下ろしたスケッチを“よくこんな絵が描けるなぁ”と絵本を読むように楽しんでいました。
 本書でも“小磯良平に絵を見せて云々”という記述があり、「そら上手いはずやな」と思いました。
 一遍が3?5ページなのでトイレやお風呂で読むのにぴったりです。

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Category: 小説 — written by tsujio 09.08.07.(金) 07:52

言葉を浴びる『バンド・オブ・ザ・ナイト』

バンド・オブ・ザ・ナイト (講談社文庫)

著者/訳者:中島 らも

出版社:講談社( 2004-02-13 )

定価:¥ 620

Amazon価格:¥ 620

文庫 ( 384 ページ )

ISBN-10 : 4062739860

ISBN-13 : 9784062739863



 2004年2月15日に文庫本第1刷発行、同年7月26日中島らも他界。
 笑えない中島らもの本。

中島らもが「アウトロー」なのはマジだった

 『明るい悩み相談室』『ガダラの豚』『ビジネス・ナンセンス事典』『寝ずの番』・・・中島らもは大好きで多く読んできましたが、この作品はそれらとテイストが違う小説です。
 『頭の中がカユいんだ』と『今夜、すべてのバーで』を足して2で割らずに酒樽に漬け込んだような小説です。

 中島らもが自著の中で“ヒッピーだった”“ジャンキーだった”“咳止めシロップでラリる云々”とたびたび書いていますが、なんだかこの本はいつものように「ふーん」と流せない感じです。
 だってこの本で語られる中島らも及びその周辺のひとたちはマジで「ろくでなし」なんですもの。

 「LSD」や「ドリデン」や「トルエン」に「ノルモレスト」。「幻覚サボテン」と「マジックマッシュルーム」、およびそれでラリった登場人物の奇態と言動。
 精神病院にスワッピングに毛ジラミにフリーセックスと飛田新地。
 そんな情景が延々と続いていきます。
 
 そんなセックス・ドラッグ・ロックンロールを日本で実践するおそらく事実、もしくはそれに近いことをしていたであろう描写にちょっと、いや、おもいっきり“引き”ました。
 読んでダメな人多いだろうなー。

イメージの洪水

 唐突にはじまります。イメージの「詩」みたいなものが。なんの脈絡もなく。最初「なんやこれ?!」と面食らいました。
 何ページにも渡って続くものもあり、“ラリって書いてるんか?!”と思いました。
 言葉のイメージが連鎖していきます。

 幻覚を文字にしたらこんな感じでしょうか。
 文章がラリってます。

ぐっときた

 先述の脈絡のない文章もそうですが、中島らもの「素」を感じます。
 “誰かに読ませること”を前提にしていない気がします。こういうのが中島らもが書く自然な、書きたい文章なのかなと思いました。
 
 だからこそ、該当ページをどうしても見つけられませんでしたが
“自分は本当に表現できる何かがあるんだろうか”
 という箇所にはグッときました。
 ホロり。

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