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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
Category: オススメ本,海外小説 — written by tsujio 09.07.21.(火) 07:00

残ページを確認しながら『ストリート・キッズ』を読む

ストリート・キッズ (創元推理文庫)

著者/訳者:ドン ウィンズロウ

出版社:東京創元社( 1993-11 )

定価:¥ 1,155

Amazon価格:¥ 1,155

文庫 ( 512 ページ )

ISBN-10 : 4488288014

ISBN-13 : 9784488288013



 「プロの探偵に家業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する」(背表紙ママ)

ストリート・キッズをオススメする4つの理由

主人公が魅力的

 主人公のニール君がとても魅力的です。なんとなく表紙の絵に惹かれ買いましたが大当たりでした。同じく表紙に惹かれて買った人も多いみたいですね。
 最初の数ページで不幸な生い立ちが頭にインプットされるので、その後の軽妙な会話もなんとなく切ないです。
 ニール君への感情移入もスムーズでページを繰るスピードも速くなります。
 508ページと厚めの文庫本ですが、「アッ!・・・」という間に読み終えました。

会話が楽しい

 主人公を含め思わず“ニヤリ”としてしまうやりとりが多く面白いです。いちいち洒落が効いているというか。こういう会話がポンポン出るので読んでいてリズムが出ます。

展開に強弱がある

 このように読んでいて楽しいところは楽しくシリアスなところは徹底的にシリアスに描かれているため、読むリズムが出てどんどん話に引き込まれていきます。読んでいて「気持ちいい」というか。
 出社前に読むと続きが気になって仕事が手につかず何も仕事してないのに定時退社すること請け合いです。

文章は上手だと思います

 訳者(東江一紀)の文章力に寄るところも大きいと思いますが、会話は言うまでもなく場の状況や心理描写もスムーズです。

登場人物よりドン・ウィンズロウ(作者)のキャラが強すぎ

 マフィアが自分の赤ちゃん(人質ではありません)を背負って微笑んでいるような写真が載っていますが、作者の経歴もすごいです。

  • 俳優
  • ディレクター
  • 教師
  • 記者
  • 劇場支配人
  • 研究員
  • 臨時雇いの覆面警官
  • フレンチ・ドレッシングの大桶にケチャップをぶち込む係
  • そのドレッシングの配達係
  • どさ回りのボードビル劇団でブリキの横笛を吹いたり取り落としたりする役
  • テロリスト対策シミュレーションでの“人質”役

を経験しており、現在は「調査員兼作家兼サファリ・ガイド」。
アフリカ史の学士号と軍事死の修士号を持っているそうです。

 マジメなのかふざけているのか判りませんが、本作は「イギリス国防省の調査活動でロンドンにいたとき、背中の骨を折って、長い入院生活を送ることになり、それが記録的に暑い夏だったので、時間つぶしと現実逃避のためにストーリーを練り始めた」んだそうです。「特に取材をしたわけでもなく、自分の体験をもとに書いた」とも。

 真偽はともかく、人を喰っているのは間違いなさそうです。

 たまたま手に取った本がこれだけ面白かったのはホントにラッキーでした。
 ぜひ一読ください。

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Category: 海外小説 — written by tsujio 09.05.29.(金) 07:50

シャイロックがかわいそうな『ベニスの商人』

ヴェニスの商人 (新潮文庫)

著者/訳者:シェイクスピア

出版社:新潮社( 1967-10 )

定価:¥ 380

Amazon価格:¥ 380

文庫 ( 176 ページ )

ISBN-10 : 4102020047

ISBN-13 : 9784102020043


 言わずとしれたシェイクスピアの戯曲です。「知っているけど読んだことはない」という人もいるんじゃないでしょうか。僕もはじめて読んだのですが、「いくらなんでも」なオチには失笑しました。

「ヘリクツ」で観客は納得できたのか?

 借金をめぐる裁判所でのシーンが一番のクライマックスです。ご存じの方も多いのではないでしょうか。「肉1ポンドが借金のカタ」というやつ。支払期日にまにあわず悪者ユダヤ人シャイロックにナイフで迫られる主人公。そこで変装した友人の婦人が現れます。
 そこでの有名な台詞「肉1ポンドは切り取ってもいいが、血は一滴も出してはダメ。だって証文には“肉だけ”としか書いてないもん」。
 あわれシャイロックは貸し倒れに陥っただけでなく「むやみにイタリア人の生命をおびやかした」と財産も没収されてしまいます。

 そんな無茶苦茶なヘリクツ、もはや「言いがかり」「因縁」を通り越し「恐喝」です。悪者シャイロックがどんな反撃に出るか!とページを繰ると、なんとシャイロック“いたしかたなし”とまさかの退散です。
 まんまと財産をせしめた主人公は仲間を集めて連夜のどんちゃん騒ぎ・・・というところまでいって欲しかったですどうせなら。学者に化けた女が得意げなのもイラつきます。

シャイロックの側からみると

 ことあるごとに主人公に商売の邪魔をされ、あまつさえ「犬」呼ばわりされていたシャイロック。どんな理由があるにせよそんなシャイロックに金を借りた主人公の厚顔無恥さが際だちます。
 「親友を大事にするが故に」借りたというもっともらしい理由がありますがそれは主人公のエゴでしょう。この親友に借金が払えない現状を手紙に書き、最後に“気にしないでくれ。この世の春を楽しまれんことを”なんて言いながら次のシーンでは“きっと助けに来てくれるはず”って精神的に不安定か主人公。
 しかも金を用立てた親友にそんなこと伝えるかふつう。「おまえのせいで死にそうになってんねん。でも気にせんといて」って気にするわ。「親友を大事にする」なら何も言わんと肉一ポンド切り取られてくれよ主人公。

 自分のエゴを満たすために普段人間扱いしていないシャイロックからあつかましく勝手に借金した挙げ句、自分がピンチになると「別にいいんやけど、おまえのせいで死にそうやで?」と親友に罪悪感を押しつける主人公。

 どっちが良いもんか悪もんかわかりません。

 すべての財産を積み、嵐で遭難した主人公の船がラストでなぜか無事戻ってきます。何の説明もなしに。「夢オチ」並みの理不尽さです。

ベニスの商人を通して見るユダヤ人

 「ユダヤ系アメリカ人」(本間 長世)の中で「舞台の上では、シャイロックが悪者としてのユダヤ人を象徴し続け」「人びとから金をしぼり上げるユダヤ人という悪いイメージ」を作ったひとつの作品である「ベニスの商人」でユダヤ人がどう描かれているのかも興味がありました。

 この作品で感じる理不尽さは、迫害されていた(る)ユダヤ人に対する理不尽さとおなじものでした。だからこういう作品が作られ、ウケたんでしょうね。「加害者の視点」で作られていると思います。

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