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通勤で夢中になれる文庫本ブログ
Category: 小説 — written by tsujio 09.12.14.(月) 07:52

「斜陽族」を生み出した太宰治の代表作、『斜陽』

斜陽 (新潮文庫)

著者/訳者:太宰 治

出版社:新潮社( 2003-05 )

定価:¥ 357

Amazon価格:¥ 357

文庫 ( 244 ページ )

ISBN-10 : 4101006024

ISBN-13 : 9784101006024



 太宰治が「傑作を書きます。大傑作を書きます」と執筆する際に言ったと云われる作品(Wikipediaより)。2009年5月に佐藤江梨子主演で映画化されています。

1948年の流行語、「斜陽族」とは?

 チラリと聞いたことのある言葉「斜陽族」。これをもじった「社用族」(会社の経費で飲み食いしたり交通費を賄う人たち)なんて言葉は現在でも使われていますね。

 意味は
「時勢の変化についてゆけずに衰えた上流階級」(goo国語辞典)
 とあります。

 終戦3年後の1948年、「上流階級」は日本に存在していた“当たり前の”言葉だったんですね。
 こんな言葉が「流行語」になるなんて。
 
 本作では没落した「貴族」が主人公ですが、現在でも「貴族」は居るんでしょうか。
 「貴族の家系」ではなく現在進行形の「貴族」。洋館に住んでいて「お手伝いさん」ではなく「召使い」のいる。みんな「日没」しちゃったのかしら。

 今盛んに取り上げられている「セレブ」は「上流階級」というより「成金」と言った方がピッタリきますし。

「貴族協会」って。

 “そもそも貴族の定義はなんなんだ”、と調べてみるとおおなんてこった、「日本貴族協会」なるものがあるじゃないか。

 貴族協会・・・「貴族」なのに「協会」とはこれ如何に。「貴族協会」なのにサイトが無料のジオシティーズ上に作られているとはこれ如何に。

 サイトには「新時代における新貴族を創る新貴族制度の提唱を致します」とあります。

 新貴族。新貴族制度。

 気になる言葉がたくさんありますがキリがないので詳しくはサイトをご覧下さい

 「文化先進国として発展を遂げるため」「新時代における新貴族を創る新貴族制度の提唱を致します」とのことです。

そんなことより『斜陽』のストーリーだ

 「お母さま」と娘の「かず子」、息子の「直治」、それに作家の「上原」。
 作品は「かず子」の独り語りで進行していきますが、それぞれを主人公として「没落していく」、「落ちていく様」が描かれています。

 その中でも聖女のように描かれている「お母さま」と、不良息子である「直治」とは対称的です。

 「お母さま」の優雅な仕草と、生活感を感じさせない様子は「これが“上流階級”か」と想像するには充分でした。

直治と太宰治

 「不良」として描かれている直治と太宰治がダブって見えます。
 「貴族(直治)」と「大地主(太宰)」であり、両者とも薬物中毒です。

 自身がモデルなのでしょうか。

 もう一人の登場人物、作家の「上原」が始終酒を呑んでいるのも太宰とカブります。
 『津軽』でも旅をしながら酒ばかり呑んでしたし。

読後は切なくなる

 「登場人物が書いた手紙を読んでいる」というスタイルが多く用いられ、読んでいるとまるで「登場人物が自分(読者)に宛てた手紙を読んでいる」気になります。

 自然作品に引き入れられます。

 ラストもスパッと終わり、余韻がたっぷり残ります。

 「滅びの美学」なんてはじめて使う言葉が浮かんできましたよ。
 

 

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Category: オススメ本,ノンフィクション — written by tsujio 09.12.11.(金) 06:00

息が詰まる『死角―巨大事故の現場』

死角―巨大事故の現場 (新潮文庫)

著者/訳者:柳田 邦男

出版社:新潮社( 1988-07 )

定価:¥ 540

文庫 ( 336 ページ )

ISBN-10 : 4101249083

ISBN-13 : 9784101249087



?ジャンボジェット機、原子力発電所、高層ビル、巨大タンカー、一旦事故が起きると死者数が巨大になる事故をいろいろな角度から分析した一冊。

あまりに凄まじい日航ジャンボ機墜落事故

 「日航ジャンボ機墜落事故」は名前だけ知っていました。過去の重大事件を振り返るテレビ番組などで。
 事故が発生した1985年、ぼくは8歳だったのでリアルタイムの記憶はありません。
 
 「520人死亡」という現実感のない死者数を出した、文字通り「巨大事故」の分析から始まります。

乗客の遺書に胸がつまる

 通勤バスで読み、泣きそうになりました。衝撃でした。

人は極限状況ににおいて、どこまで冷静な判断と行動をとり得るだろうか。

 という書き出しで始まる“「意図せざる遺言」のメッセージ”。
 「乗客たちが墜落する機内で書き残した遺書」というシチュエーション自体強烈です。
 一例を記すと

 大阪商船三井船舶神戸支店長河口博次さんの遺書の最後のところは、こう記されている。
「・・・・・・・・
 ママ こんな事になるとは残念だ さようなら 子供達の事をよろしくたのむ 今6時半だ 飛行機は まわりながら 急速に降下中だ 本当に今迄は幸せな 人生だったと感謝している」
 

 「飛行機は まわりながら 急速に降下中だ」
 この部分を読んだ瞬間胸が詰まりました。

 そういう極限の状況下で書かれた文章は、それ自体非常に重いものです。

事故発生時の状況と分析

 本書を読んだだけでは、“原因は製造元のボーイング社にあるんじゃないの?”と単純に思ってしまいます。
 あれだけの事故、いろいろな要因があると思いますが、明確な原因調査が遺族の再調査依頼に対して行われていないことに疑問を感じます。

搭乗していた、登場予定だった著名人

 多くの有名人が搭乗していたことも話題になりました。

搭乗していた

  • 坂本九(歌手)
  • 北原遥子(女優)
  • 中埜肇(阪神タイガース社長)
  • 浦上郁夫(ハウス食品社長)
  • 藤島克彦(コピーライター、中島らもの師匠)

搭乗予定だった

  • 明石家さんま(タレント)
  • 麻実れい(元・宝塚歌劇団雪組トップスター、女優)

 これを読んだ後にエールフランス航空の447便墜落事故
事故
がありました。

フライトレコーダーを聴く

 本物のフライトレコーダーを基に軌跡をFLASHで起こしたムービーがあります。
日航機墜落までの軌跡
 あまりにリアルなため、視聴後ショックを受けられる方もいらっしゃると思いますが、実際に起こった出来事で、実際に524名の方が搭乗していました。

船の事故

 本書では大型船の航行について、それが海域によってどれだけ危険であるか、と実例を交えて指摘されています。
 最近でも「護衛艦あたご漁船清徳丸衝突事件」や「護衛艦「くらま」と韓国籍貨物船「CARINA STAR(カリナ・スター)」の衝突事故」など、本書の指摘通りの事故が起きています。

 この本は、いままで当たり前すぎて殆ど考えることの無かった「安全」について、真剣に考えさせてくれる一冊でした。

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Category: 海外小説 — written by tsujio 09.12.10.(木) 07:42

『高く孤独な道を行け』のストーリーはどうか

高く孤独な道を行け (創元推理文庫)

著者/訳者:ドン ウィンズロウ

出版社:東京創元社( 1999-06 )

定価:¥ 1,050

Amazon価格:¥ 1,050

文庫 ( 453 ページ )

ISBN-10 : 4488288030

ISBN-13 : 9784488288037



 「探偵ニール」シリーズ3作目。前作『仏陀の鏡への道』はイマイチ消化不良でしたが、本作はどうでしょうか?!

戻ってきたニール・ケアリー

 「もっとニールの活躍を読みたい」と前作を読み終わったあと物足りなさを感じましたが、本作はその点大丈夫。
 前作にあった「文化大革命」のような小難しい背景も無いですし。
 舞台はイギリス→中国ときて本作ではアメリカです。

1作目『ストリート・キッズ』の延長

 前作では物語に没入しようとするところで歴史背景が延々続いたりしましたが、本作ではあくまで主人公ニール・ケアリーの行動がメインです。
 一作目を面白いと感じた方ならすんなり入れると思います。

 そういう意味では2作目がちょっと異質だったのかなと。
 また、前作のエンド部分から物語が始まりますが、最初だけなので、2作目をとばして本作を読んでも大丈夫だと思います。

成長する主人公

 1作目『ストリートキッズ』から2作目『仏陀の鏡への道』ときて、3作目の本作。
 時間の経過が物語にも反映されています。

 一番に感じるのは「主人公ニール・ケアリーが大人になってきている」ということでしょうか。
 このシリーズは「ニール・ケアリーの魅力が中心」だということを考えると、これは意外に大きな変化です。

 まだ子供だった1作目から、青年へと成長する主人公を実感できます。

ニール・ケアリーが戻ってきたという安心感

 こればかりになりますが、「ニールの続きを読める」という喜びが大きいです。
 正直名作『ストリートキッズ』ほど物語に引きずり込まれることはありませんが、その後のニールを読める喜びが大きいです。
 
 決して本作がふつうの作品だと云うわけでなく、1作目が“面白すぎた”んです。
 
 でもやっぱりニール・ケアリーのキャラクターは魅力的だなぁ。

新しい展開も

 主人公の成長に伴って、登場する人物の設定も変わってきています。
 それに合わせてシリーズ全体の、主人公の人生が大きく影響されそうです。

 そういう意味ではシリーズ折り返し的な作品ではないでしょうか。

もどかしいところ

 いろいろな書評にもありましたし、このエントリーでも再三記述しましたが、やはり改めて1作目が与えた衝撃の大きさがわかります。

 『ストリートキッズ』を越える作品はむずかしいとは思いますが、本作でも“もうちょっと後半にかけて盛り上がって欲しかった”と思いました。
 
 

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Category: オススメ本,小説 — written by tsujio 09.12.08.(火) 07:47

濃いー8作品を収録。『美食倶楽部』

美食倶楽部―谷崎潤一郎大正作品集 (ちくま文庫)

著者/訳者:谷崎 潤一郎

出版社:筑摩書房( 1989-07 )

定価:¥ 1,050

Amazon価格:¥ 1,050

文庫 ( 447 ページ )

ISBN-10 : 4480023291

ISBN-13 : 9784480023292



 開高健『最後の晩餐』に転載されていた『美食倶楽部』の一部を読み、“ぜったいこれは読もう”と決めていました。
 本書には『美食倶楽部』を含む大正期の谷崎作品が8編収められています。
 すべて「濃い作品」ですが、中でも特に印象に残ったものを。

美食倶楽部

 タイトル通りの内容ですが、食べている描写が“汁にまみれている”様を想像させます。
 “じゅくじゅく”いう音が聞こえてきそうですが、まったく汚らしくなく、「官能的」なんて言葉が浮かんだりしました。
 とても“汁っぽい”。
 

或る調書の一節

 警察(たぶん)での取り調べなんですが、内容とは裏腹にコントを読んでいるおかしさがあります。
 思わずバスの中で“なんやこれ”と笑ってしまいました。
 これは文中から何かを読み取るのではなく、ただ読んで笑う作品だと思います。

 読み終わったあと、良質の“だから何やねん”が出ます。
 こういう作品を書くのが谷崎潤一郎の好きなところです。

小さな王国

 これは『痴人の愛』のラスト部分を読んだときと同じ印象を受けました。
 この情けなさ、ペーソス、とても好きです。
 そしてやっぱり笑ってしまう。

白昼鬼語

 探偵小説風にグイグイ引き込まれて、最後のオチまで一気です。
 でも僕はこのラスト、それまでの話の勢いと比べると少し弱く感じました。
 辻褄なんて合ってなくて良いから、もっと突飛な変態的なオチがあったらなぁ。

青塚氏の話

 これのラストはちょっともう、それまで読んだ作品の余韻をかき消すラストです。
 「これを最後に持ってくるか」と編集者の意図を計りかねると同時に、「ようそんな昔にこんなの書いたな」とやはり谷崎潤一郎は(ある意味)すごいと思わざるを得ません。
 ダメな人も多そうですが。

オススメの一冊です

 殆ど全作品を揚げてしまいましたが、それほど濃い一冊です。
 全作品を通して感じるのは「古めかしさが全然ない」ということです。
 もちろん建物や風俗の描写は古めかしいものがありますが、それが余計に「怪奇」「ゴシック」な雰囲気を造り上げ、「ふしぎの館へようこそ」的な谷崎ワールドを造り出している気がします。

 発想力・アイデア勝負な一冊です。
 ぜひ一読を。

 最後に。
 表紙に谷崎の若いころの写真が載っていますが、往年の“堅太りおっさん”からは想像もつかないほど美男子です。

 あと、最後の「解説」はよくわかんない。

 

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Category: 海外小説 — written by tsujio 09.11.27.(金) 07:20

お父ちゃんの『図書館警察』

図書館警察―Four Past Midnight〈2〉 (文春文庫)

著者/訳者:スティーヴン キング

出版社:文藝春秋( 1999-08 )

定価:¥ 1,000

Amazon価格:¥ 1,000

文庫 ( 696 ページ )

ISBN-10 : 4167148196

ISBN-13 : 9784167148195



 プレゼン原稿作成のために図書館で借りた参考図書が原因で起こる?『図書館警察』。誕生日に貰ったポラロイドカメラ、撮影した写真には不思議なものが写っていた?『サン・ドッグ』。
 長編に近い長さの中編を2作収録。

『図書館警察』はいつものキング節

 あり得ない話なのにリアルに感じられ登場人物に実在感があってところどころ下品。
 キングの魅力が凝縮された中編です。

 『図書館警察』というイロモノなタイトル(と表紙)ですが、同時収録の『サン・ドッグ』の面白さと併せてお買い得な一冊だと思います。

 登場人物のエピソードにホロっとさせられるところもあり、「ホラーだけじゃないキング」を感じることも出来ます。

キングのすごさがわかる『サン・ドッグ』

 「これだけ多作なのにまだこんなアイデアが出てくるか」とそのアイデアに感心してしまう作品です。
 「写真」を使うことで、刻一刻と恐怖が迫ってくる様を身近にイメージし易くなっています。

 「心霊写真」は言うまでもなく、『リング』の貞子であったり、二次元は恐いですね。

 しかし日本ホラーのようにネチネチジトジト夜中にトイレに行けない質の恐さではなく、あくまでヤンキーのホラーはハッキリしています。

 キングの作品には「見えそうで見えなくてウッフン」な日本の奥ゆかしさはなく、「わしお化けです!」というすがすがしいまでの自己主張があります。

 「ホラー」という言葉から受けるイメージとは違うので、恐いのはキライという人でもすんなり入れるのではないでしょうか。

 いつも感じますが、キングの作品は「こわがる」ために読むのではなく、その「アイデアを楽しむため」に読むのだと思います。
 そういう意味では「ふつうの」小説です。

 だからキングは「ホラーが好きではない人」からも多くの支持を得ているのだと思います。

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